HT81S 初代スイフトスポーツ
初代スイスポは2台乗り継いだ。
気軽な通勤の足で、かつ軽よりは快適な乗り味と信頼性を求めたのだ。
全長4m未満、排気量1500cc以下、車重1t 以下、MTでキビキビ走れる物
安価である事。これらの条件を満たすのは、この初代スイスポか、ヴィッツRS
ぐらいしかない。最初のスイスポ。走行距離こそ12万kmそこそこだったが、値段の割に各部ガタガタだった。
ヘタっていたリヤゲートダンパー、片側だけ極端に黄ばんだヘッドライトは中古を入手して交換。
タイヤ、ホイールも安い中古で調達した。
半年ほど通勤に使用したが、ヘタった足回り、中古タイヤの為かトラクションがかからない操縦性、
余りに安っぽい造りが嫌になり、BD5に乗り替えたのだった。その更に1年半後、↑の車の為に入手したパーツ(純正ホイール等)が勿体なかったのと
半年しか乗らなければ、その車の正当な評価もできないだろう事で再度スイスポを
今度は17万kmオーバーの過走行車を安く入手した。距離は走っているが、格安で入手したこちらの方がはるかにマトモだった。
タワーバーは前車から移植、純正ホイールに新品タイヤを履かせてみた。この初代スイスポ、巷での評判はそれほど悪くはないのだが
私なりに気づいた点、感じた事を書いておく。
この車の最大の美点はエンジンだ。この初代HT81S専用チューンがなされたエンジンは
確かによく回る。この車重に対してはパワー、トルクも及第点だ。
回さずそ〜っと走れば、燃費は15km/L ぐらいは走る。
急いで走る通勤で12km/L ぐらいだ。
しかし、そのエンジンを全く活かしきれない車体回りは残念以外の何物でもない。
このエンジンは圧縮比11.0 、可変バルタイを備えるのだが、7000回転弱でリミッターが入る。
まるで実用エンジンだ。スズキの技術をもってすれば、8000回転まで回すのは何の造作もない
はずだ。 しかし、8000回転まで回した時のパワー(恐らく130psぐらいになるのでは?)に
トランスミッション、クラッチ、デフ、ドライブシャフト等ドライブトレインがついて行けないのだろう。
アルトやkei のワークスにヘリカルLSDが備わるのにこの車には装備されないのは
LSDを付けるだけで駆動系が悲鳴を上げるからだと思われる。車体回りはもっと酷く、基本骨格がワゴンRワイド、つまり軽のストレッチ版故に
各部の造りは安い軽そのものである。ジャッキアップして車体下を見れば一目瞭然。
これを見た後ではヴィヴィオが高級車に見える。逆に言えば、スズキの車造りは抜け目がない。低価格で売っても充分利益は出るのだろう。
このスイスポはいろいろな車の寄せ集めでできている。表皮がレカロの前席もkei ワークスと共通部品
ハンドル、シフトノブもKei やアルトワークスと共用だろう。 白く塗った純正アルミホイールも
アルトワークスと共通だから幅が5Jと狭い。4輪ディスクブレーキを奢っているが、ホイールは
13インチでも履けるのだ。ショックアブソーバが何かの都合で一部少し違うだけで専用品に
なってしまうのは逆に残念だ。 輸出用イグニスと共通の240kmメーターは愚の骨頂でしかない。
そんな物は要らないから省略されてしまった水温計を返せと言いたい。水温管理は重要なのだ。
カーボン柄の樹脂部品と相まって、まるでオモチャみたいだ。メーター回りは標準車と同じでいい。
レカロ表皮シートも要らないから、LSDを付けて欲しかった。軽の拡幅版なのでホイールベースが短い。にもかかわらず無理やり185サイズのタイヤを履かせた為か
最小回転半径が5.3m と大きく、取り回しは見た目よりも不便だ。車体剛性に不満は無いが、
乗り心地はドッタンバッタンと賑やかである。 タイヤ、ホイールを標準サイズにする事によって
トラクション不足は大分マシになった。メーカーは純正状態で走行試験をやっている。その状態が
ベストなのだろう。この外寸でNAでそこそこ走る。買い物の足としてはちょうど良いが、長距離を走る気にはならない。
軽自動車と余り変わらない内容に普通車の維持費がかかるのも残念だ。先述のヴィッツRSとはモノが違う。
ヴィッツは小型車だがトヨタが総力を挙げて開発した、この時代の標準になるべき車だった。
対して初代スイフトは、軽の拡大版でいろいろ寄せ集めて作られた安かろうお手軽グルマだ。
この初代スイスポ、決して希少車ではない。2003年〜2005年の間に恐らく5000台ぐらいは売れたはずだ。
安っぽいが頑丈な車なので走行距離には拘らずにそこそこのものがまだ探せるだろう。